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  こころのSOS
提供・監修:ピースマインド
疲れたら『退行』
風邪をひいてしまった時、皆さんはどうされていますか?

症状が軽ければ、一時的にお仕事など活動のペースを落とし、身体を休めれば回復しますね。もう少し重くなれば、普段の食事をもっと柔らかくて消化の良い食べ物に切り替えたり、横になって寝ている時間を増やしたりというということもあるでしょう。さらに重くなれば、自分で食事をとることができなくなって誰かに食べさせてもらったり、身のまわりの世話をしてもらったりするようになるかもしれません。

実はこれ、赤ちゃんが成長するにつれてだんだん人の手から離れて自立していく過程を、ちょうど逆にたどっているようにみえませんか? そうなんです。病気になった時というのは、誰でも一時的に「退行」して、そこから回復していくのです。

一般に、「退行」といえばいわゆる「子ども返り」、すなわち依存的・未熟な状態に逆戻りすることを意味し、否定的なイメージがあります。しかし実際には、適度な「退行」は心身の健康の維持にとって非常に大切な役割を果たすものだと言えます。

例えば睡眠です。眠っている時、人は皆とても無防備で、ほとんどの活動を休止した状態、つまり一時的な退行状態にあるといってよいでしょう。しかし、健康のためには毎日の睡眠が不可欠ですよね。 そう考えると、飲み会やカラオケでハメをはずして賑やかに騒ぐというのも、一種の健康的な退行といえるかもしれません。あるいは、ゲームやスポーツに熱中して我を忘れたり、お祭りで子供のようにはしゃいだり・・・。

もちろん、こんなアクティブな退行ばかりとは限りません。もし、非常に悲しいことがあったり、ひどく落ち込んだりしたら、はしゃぐ元気も出ないでしょう。そんな時は、美味しいスイーツをゆっくり味わったり、だれかに優しく慰めてもらったり、布団を頭からかぶってひたすら眠ったりすることが、一番ほっとできることかもしれません。 そうそう、仲の良いカップルが、第三者からみたらちょっと引いてしまうような甘えた声やしぐさで会話するというのも、まぁ、かわいい退行と言ってもいいでしょう。

私たちは日ごろ、社会の中で「良識ある大人」としてふるまうことを期待されています。でも実際には、個人としてのそれぞれの欲求というものもあり、日々葛藤を感じながら生きています。そして、そんな葛藤と真正面から取り組んでも、どうしてもうまくいかないこともあるでしょう。

そんな時、一時的に子供っぽい行動をとることで、マイナスのエネルギーを発散したりプラスのエネルギーを補給したりして、何となくバランスをとりながらそれなりにやっていくというのが、現実的な折り合いのつけ方なのかもしれません。 または、辛いことがあって疲れた時、自分が安心できる「避難場所」へ一時的に退避して、そこで態勢を整えて、また敵地へ赴くというイメージかもしれません。

いい大人が「遊び」や「甘え」なんて・・・というのではなく、むしろいい大人だからこそ、上手に遊んだり甘えたりすることが必要なのではないでしょうか。

最近ちょっと疲れ気味のあなた、ドリンク剤を飲んでもうひと頑張り!もいいですが、たまにはご自分だけのとっておき退行法を試してみてはいかがでしょうか。

参考文献:「精神看護学ノート」武井麻子著 医学書院
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