今回は、「好き」ということと「脳」のつながりをやさしく科学するお話をしましょう。
カウンセリングでは、恋愛のご相談もたくさんあります。
好きな人からは思われず、嫌いな人から好かれたり、自分の気持ちが愛なのかどうかわからなくなってしまったり…。
多様で抑えがたい「人を好きになる」という気持ちはどこからくるのでしょうか。
面白い実験があります。 1974年に発表されたカナダのダットンとアロンが行った生理・認知説の『つり橋実験』です。場所はカナダの大渓谷、キャピラノ川。ここの大つり橋を独身男性に渡ってもらいます。
中ほどには若い女性が待っていて、ちょっとしたテストに答えてもらい、「詳しいことを知りたければあとでここに」と連絡先を渡します。 このシチュエーションとは別に木橋でも同じ実験をしてみると、怖い大つり橋の上で手渡された男性の半数近くが連絡をし、木橋では1割程度という結果が出ています。
なぜだと思いますか?
人の心と体はまさに一心同体。ドキドキしていると、この場合はつり橋を渡るという緊張感ですが、恋のときめきのドキドキと身体的な反応が同じなので、脳が区別できずに錯覚をし、相手に好意を持ったと勘違いするのです。それで結果的には、無意識に連絡する確立が高まったと考えられます。
脳って意外に単純なんですね。
脳が指示する「好き」の判断は身体反応に対してだけではありません。匂いでも行われます。
私たち人間もホルモンを発散していますが、ある海外の大学で行った実験では、男子学生の脇から分泌液を収集し、女子大生を集めて、その匂いが何かを伝えずに嗅いでもらい反応を分析するというものです。そうするといいと思う匂いと嫌悪する匂いが人によって異なるのだそうですが、この場合の好き嫌いは、その人のDNAに組み込まれたものだというのです。
匂いによって母系、父系との繋がりが区別できるような好き嫌いが私たちには組み込まれ、母系の匂いに対して嫌悪するように(つまり同胞を避けるため)、仕組まれているというのです。
この論文を直接読んではいないので詳しくはわかりませんが、何となく感じている好き嫌いも、自然が仕組んだ生存効率を高める手段。脳がそれを受けて指示を出しているといえるでしょう。
脳に蓄積された経験も影響します。例えば爽やかな役柄だけをやっている俳優の「そっくりさん」。別人とわかっていても、その人に対しての第一印象は良くなりませんか。よく知っているものが良い印象を持つというのは、数多く体験しても問題がなかった、つまり無害であり、場合によっては有益と判断できるので、脳が受け入れを指示したと言えます。
人は馴染みのあるものに好意を抱くという実験結果もちゃんとあります!
人を好きになることで、幸福感も芽生えますね。この幸福という発想からいえば、いまの社会では「お金持ちは幸福」感が高まっています。 ホリエモンがなぜ誕生したと思いますか。物欲を満たした喜びの情動は、脳に対して短時間しか刺激を与えられないからです。つまりすぐ消えてしまう喜びです。消えてしまった幸せを求め、脳はより強い刺激を求めます。それが消えるとさらに強い刺激を求め…、こうしてイタチごっこのように、どこまでいっても真に満足を感じられず、幸福感が続かないのです。
これに対して、長く脳に幸福感を与える刺激があることもわかっています。それは人との関係性から生じる快感、幸福感です。 この喜びは、物欲を満たしたときに生じる脳の快感よりずっと長く続くのです。どんなにお金があっても真に心を満たせないのは、こうした脳のパターンがあるからです。
もしモノがあるだけで幸せを感じる生き物がいたとしたら、より多くを得ようとして争いは激化し、この種は滅びてしまうでしょう。だから私たちの脳は、こうした相手との関係性から幸せを感じる仕組みになっていると考えられます。
脳は私たちそのものでありながら、私たちの予測を遥かに超えた判断を毎日下し、『好き』からくる幸福感も、その機能が大きく関わっているという、今回はちょっと不思議なお話でした。
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