|
この十数年、痴呆症が社会問題となり、注目を浴びてきた痴呆症の予防方法から、食べ物との関連や、治療薬についてなど、色々な話題が出ています。もしかしたら痴呆症になるのでは、と不安をお持ちの方も多いかと思います。今回、心理的な観点からお話したいと思います。
痴呆症は、脳の病変(脳が萎縮する、脳の血管が硬化するなど)によって起こる病気で、ひどい物忘れが主な症状です。付随して、判断力、理解力、計算力の低下、見当識(時間、場所、空間の感覚が無くなる)の障害、精神症状が起きてくるのです。さらに、痴呆症で興味深いのが、その人の生き方や家族模様が反映されている事です。
ここで、例をあげて説明します。ある70歳の男性は、仕事を65歳で退職してから、物忘れが目立つようになりました。徐々に物忘れが進行し、今では5分前の事も覚えていません。さっき食事しても、食事をしたという出来事そのものを忘れているのです。その為、食事を食べさせてもらえないと感じてしまうのです。ここで、家族の絆が深ければ、笑い話で終わるのですが、不仲であれば関係はさらにギクシャクして行きます。
また、退職した事すら忘れてしまいます。そこに、記憶の逆行が加わって(数十年分の記憶が欠落して、タイムマシーンに乗ったごとくに数十年前に戻ってしまう)、30年前の記憶に戻れば、今は45歳の働き盛りの自分に戻ります。すると、「会社に行く、会議に出なければ」と出かけてしまいます。そして45歳の歳に逆行していれば、老妻を妻と認知できず、母と錯覚したり、妻がいなくなったと探し回るなどの現象も起きます。ここでも、家族の信頼関係があれば、寛容に対応出来ますが、そうでなければ、ストレスに満ちた混乱状況が起きて来るのです。
この他にもお金に執着し、保管した場所も、保管したという行為も忘れ、金品が無くなったとの騒ぎも起きてきます。この時も家族の絆の有無が左右します。
さらに、これらの症状が出るパターンには、その人の生き方や心理的こだわりの反映があります。例えば、先ほどの例は、仕事一筋に生きて来た人に多く出ます。良妻賢母タイプの女性は、「夕食作らなければ、主人が帰ってくる、子供が待っている」と子育て真っ盛り時代に逆行しがちです。また、金銭へのこだわりのあるタイプの人では、いつもお金が無くなる、盗まれると不安にとらわれ、金品を盗まれない場所に隠すのですが、隠した事自体忘れ、またなくなったと言って、探し回ったり、周囲の人を泥棒と疑う現象が出てくるのです。
このように、その人の生き方が、痴呆症状に出てくるのです。生き生きとしていた時代に、逆行できれば、幸せですが、苦痛な時代や執着している問題(お金など)に逆行すれば、苦しいでしょう。
日頃から、いかに生きるか、生き生きとのびのびと生きる事が大切なポイントだと思います。
|