感情は自分自身といつも共にあり、刻々変化しています。これを読んでいるこの瞬間にも、もしかしたら悲しい気分で読んでいるという方がいらっしゃるかもしれませんね。
感情は心の声ですが、わたしたちは自分自身の心の声をどのように取り扱っているでしょうか?喜びなど、快い感情を表現することに抵抗のない人も、不快な感情、悲しみや怒りを表現することに難しさを感じる方は多いのではないでしょうか。
「泣いてはいけません」と言われて泣くのを我慢し続けていると、悲しみやいらだちを表現しないようにおさえるようになったり、そもそも悲しみやいらだちといった感情を感じているのかどうかすらわからなくなったりします。自分の感情をおさえて我慢して生きていると、いつの間にか心の中に悲しみやイライラが澱のようにたまってゆううつな気分に支配されるようになってしまうかもしれません。
おさえたつもりの感情が無意識に態度に表れてしまうこともあります。
かんしゃくを起こしたらなんでも好きなものを買ってもらえたというような経験を重ねると、自分の要求を通すために感情を爆発させればよいのだと思うようになるでしょう。
このように自分の感情を押さえることでゆううつな気分になったり自分自身の感情に鈍感になったりすること、感情を爆発させるように表現することはどちらも自分が感情に支配された状態だといえます。感情に支配されることで自分自身が生き生きと過ごせなくなったり、本人は平気だけれども周囲の人がその人の扱いに困ったりするということが起きてくるのです。
感情に支配されるのと反対に、自分で自分の感情を適切に扱うことができれば、それを人との関わりの中にいかしていくことができます。
たとえば、自分自身の怒りやイライラを、そのまま「うるさい!」「ほっておいてくれ!」と表現するのは直接表現です。
これに対して「今怒ってるんだ」とか「最近イライラしてしょうがないのです」と言うのが直接報告です。
「私は一人取り残されたような気分です」「あなたの顔を見るとはらわたが煮えくり返るようだ」などと、自分の内側の様子をたとえて表現することもできます。直接表現と直接報告は、どちらも自分の感情を相手に直接伝える方法ですが、受け手に与える影響はずいぶん違います。
直接表現をされた場合は、感情がダイレクトに伝わる分、受け手側に引き起こされる感情も大きくなります。生き生きとした感情のやりとり、なまのぶつかり合いがおきやすい表現方法といえるでしょう。直接報告は自分の様子を客観的に相手に伝えるやり方で、受け手側は「あなたの感情」を一つの情報のようにして冷静に受け止めたり対処方法を考えるなど、あなたへの配慮を生み出しやすくなります。
自分の感情にふたをしたままで「そんな余分なことはしなくていい」などというのは間接表現です。自分の中にある(この場合だと、「不愉快だ」というような)気持ちを押さえて、相手の行動に焦点を当てる表現方法です。間接表現だと、自分の本当の気持ちや感情を隠したままですので、受け手側にとってはあなたの真意が分かりにくく、自分自身を大切にしない表現方法だといえるでしょう。
これらの方法のうち、あなた自身はどんな表現方法をしていることが多いでしょうか?感情という心の声に耳を傾け人との関わりの中で適切に表現することは、自分を大切にすることでもあり、また自分を大切に扱ってほしいというメッセージを受け手側に送ることでもあります。
どんな時も常に冷静に直接報告をするのがよい、というものではありませんが、人との関わりの中で、自分が自分自身の感情をどんなふうに取り扱っているのかを知ること、そしてその時に相手はどんなふうに反応を返してくれているのか日頃の生活をふりかえってみると、新しい自分に気づくことができるかもしれません。
(参考文献:「人間関係トレーニング」津村俊充・山口真人 編 ナカニシヤ出版) |