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  カウンセラー'Sコラム
提供・監修:ピースマインド
ITがストレスになる―新時代のストレス
カウンセラー 谷地森久美子
時代がもたらす新しいストレス
初対面では普通、相手に電話番号を尋ねることはあまりしません。しかし、パソコンや携帯電話のメールアドレスは平気で交換することはありませんか? さらに相手の人となりを知らないまま電子メールや携帯メールでやりとりをすることも多くなりました。その結果、ネット上で思いもかけないアクシデントからストレスが生まれるようになったのです。今回は時代がもたらした新たなストレスについて、事例を通して考えていきます。
電子メールやネット上で大胆になるA氏のケース
あるIT企業の管理職から次のような相談を受けました。
中途採用で入社したA氏の対応にかなり戸惑っています。A氏は日ごろ、紳士的で、これまで特に問題があるような人とは感じませんでした。ところが最近、A氏も参加して部内でネット会議をしたのですが、ディスカッションをしてがくぜんとしたのです。 会議記録を後で読み返しても、どうしてそこまでの議論に発展するのかと首をかしげるほど、A氏の姿勢が毎回攻撃的なのです。A氏はどんな人でも逆上させるような“怒りのツボ”を心得ているようで、結局A氏の発言によって、グループが分裂・破たんの危機に陥ってしまいました。 しかし、A氏はこのようにネット上では攻撃的な表現をするのですが、通常のフェイス・トゥー・フェイスの会議では何事もなかったかのように話をしています。そんなA氏を周囲の人は敬遠し始め、一緒に仕事をしたがらなくなりました。直接関係のないほかの部内の社員も、そんな状況を掲示板や電子メールなどで知ってしまい、皆がストレスに悩まされているようです。管理職としてはどうしたものかと頭を悩ましています。
問題になったテクノストレス
オフィスのOA化に伴うストレスとして、「テクノストレス」(テクノ依存症・テクノ不安症)という言葉が生まれました。具体的にはVDT作業症候群、頸肩腕障害(キーパンチャー症候群)などの体の変調と、コンピュータ・ストレス反応(不安焦燥感・抑うつ状態など)を代表とする精神不調が話題となりました。しかし、これらのストレスは、いわゆる「症状」として表れるため、対処法・治療法も明確に示すことができました。

一方、デジタル技術が日々進化していく中で、A氏の事例のように新たな現象が起きつつあります。

“電脳執筆論”を展開して精力的に活動している鐸木能光氏の表現を借りると、それらは「デジタルストレス」と呼ばれるものです。氏は「デジタルストレスは、目に見えにくく、また、自覚しにくい。それだけに厄介な存在だ」と指摘しています(参考文献:『デジタルストレス―パソコンに蝕まれる現代人』鐸木能光著、地人書館)。

デジタルストレスの特徴
電子メール、ネット上のデジタルストレスの特徴としては、次のようなことが挙げられます。
1)文字でのやりとりのため、いったん摩擦が生じると、言葉尻をとらえた争いが引き起こされる可能性が高い
2)直接話せば「あぁ、そういうことだったの」ということも、電子メールやネット上では意味や解釈のすれ違いでどんどん泥沼に入り引っ込みがつかなくなってしまう
3)ネット会議、メーリングリスト、一斉送信などの場合、直接ぶつかっている者同士にとどまらず、周囲にまで瞬時に多大な影響を与える(間接的に、争いに巻き込む)
「人の印象を決定する要素」として言葉が占める割合はわずか7%
ここで、心理学者メーラビアンの研究(『Silent messages』、『Nonverbal Communications』)を紹介しましょう。

コミュニケーションで人の印象を決定する要素のうち、言葉(話の内容)の割合は全体のわずか7%にすぎません。人の印象にとって主要な要素は、言葉よりもむしろ「態度や物腰(身振り手振りも含む)」でした(全体の55%)。2番目は「話し方(声のトーン、話すスピード、呼吸、間の入れ方など)」で38%という結果が出ています。これらは電子的に伝えられない、「アナログ情報」とも呼ぶことができます。

それを基に上記のA氏の事例を検討し直すと、パソコンを介した顔が見えない関係性の場合、画面上の言葉の情報――つまり7%プラスアルファ程度しか伝わらないことになります。そうなると当然情報不足になり、受け手の主観的妄想が膨れ上がることで、電子メールやネット上の関係は、いつもちょっとしたことでアクシデントが起こりやすい可能性を含んでいるといえるでしょう。
私たちにとって便利なものであるはずだったインターネット。しかし、そのネットやメールに乗って、生活や仕事の中にストレスが入り込んでくる時代になったといえます。

上記のことから、私たちはいまや、現在の三種の神器の1つともいえるパソコンやインターネットを、場面、状況、相手などによって、臨機応変に使い分けていくことが求められています。つまり、新しいストレスに対する身のかわし方として、時には電話をかけたり実際に会って話し合ったり、といったアナログ的なかかわりの必要性を自覚することが望ましいのです。

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